
今年は、デビューから20年、そして事故から10年が経ち、自分にとって大切な場所で活動の報告と感謝をお伝えする場をいただいている。
自分にとってこの10年は、長かったのか、短かったのか。時間感覚ではよくわからないが、濃密であったことは間違いない。
怪我からの復帰は、一般的に「回復」という言葉を使うことが多い。自分もわかりやすいという理由で、この言葉を使っていたが、実のところを言うと、回復したいという意識を持ってこなかった。それは、「それまでの自分に戻る」という感覚よりも、「新しい命に生きる」という想いが強かったからだ。
自分ではどうすることもできない、寝たきりの状態から、一日一日、1ミリずつ膝を曲げるリハビリを重ねて痛みと向き合い乗り越えてきた。それは、破壊の痛みではなく新しい創造の苦しみだった。できなくなったことができるようになることは、自分にとって喜びであった。ときには、「昔の自分はこうだったのに」と過去を振り返り、嘆くこともあったが、それが嘆きのブルースで終わることはなかったのだ。
人には、それぞれの人生に与えられる役割、託されたものがある。ある人はその場にいるだけでみんなを笑顔にし、ある人は、そっと静かに安らぎを与えてくれる。自分にとってはマイナスに思うようなことでさえも、関わる誰かにとってプラスとなることだってある。
若い頃は、ブルースシンガーに憧れたこともあった。しかし自分には、どこかしっくりこない、いや、自分がブルースに似合わないように思えた。
自分の人生は、まさにブルースを打ち破る光に命与えられてきた。だから僕は、ブルースではなくその光を歌うし、これからもそれは変わらないだろう。きっとそれが自分の役割だと思うし、それこそが自分が歌う理由なのだから。